
多くの神話の中には幸運の神が登場し、人間はその神々を願掛けに使うなどしてきました。有名なローマ神話で幸運を司るのはフォルトゥーナという女神です。フォルトゥーナは舵輪を持つ姿で描かれており、運命の車輪を操るとされます。
このシンボルはタロットカードの運命にも使われ、フォルトゥーナは英語のフォーチュンの語源でもあります。彼女は不安定な球体の上に羽の生えた靴で立っており、幸運は危ういもので逃げやすいことを教えてくれます。彼女が持つ穴の空いた壺は、どれだけ運を掴んでも満たされないことを示します。後ろ髪しかなく前髪が描かれないのは、チャンスは後からは掴めないと解釈されます。フォルトゥーナから幸運を追いかけすぎる危険性を感じる人も少なくありません。
一方で金運やギャンブル運が上がるとされたのが、ギリシア神話のハデスです。冥界を司る冷酷で怖いイメージが持たれていますが、彼の支配下である地下には金銀や資源が豊富に眠っています。ハデスは死と結び付けられる恐ろしいイメージの他にも、地位や富による加護を願う人が信仰してきました。
象の頭が特徴的はガネーシャはインド神話に登場し、現世利益や商人への加護が信仰の対象です。インドの店先にはガネーシャ像が置かれ、日本におけるお稲荷さんのような存在感を放っています。イスラム教徒は偶像崇拝が禁止されているので本来であれば信仰心から像を手にすることはありませんが、インドではイスラム教徒ですらガネーシャ像を店先に出すほど人気です。金運の上昇の他にも厄除けや学力向上など様々な加護があるとされ、とりあえず困ったらガネーシャ像に祈りを捧げます。
日本のお稲荷さんはウカノミタマノカミが正式名称で、祀った神社は全国各地に存在します。元々は豊穣の神でしたが、工業や商業の台頭によって農業従事者の立場が弱くなったことで工業や商業など様々なことを司ると言い伝わるようになりました。お稲荷さんは実際に人間たちに利益をもたらしたので、未だに商業の世界で厚く信仰されています。
ギャンブラーたちに人気の恵比寿は、七福神の1人です。7人の中で唯一インド神話に起源がなく、当初は豊漁をもたらすとされました。中世に商人たちが市場で儲けを出すようになると、海から商売へと加護が変化しました。どの国でも商売繁盛がお金儲けやお金持ちを連想させるようになったのは、商人たちが市場を支配するようになってからのことです。